「最近、ちょっと疲れやすくなった」「前より歩くのが遅くなった気がする」――。
そんな変化を、つい「年だから仕方ない」と片付けてしまうことはありませんか?
実は、その小さな変化の積み重ねが「フレイル」と呼ばれる状態のサインかもしれません。フレイルは、放っておくと転倒や入院、要介護状態につながりやすいことが研究で分かっていますが、早めに気づいて対策をすれば、再び元気な状態に戻ることもできるとされています。
今回は、フレイル研究の中でも特に有名な「Fried(フライド)らの研究」をもとに、フレイルとは何か、どんな人がなりやすいのか、そして今からできることを分かりやすくご紹介します。
フレイルってそもそも何?
「フレイル」とは、年齢を重ねることで体力や心身の働きが弱くなり、ちょっとした病気やケガがきっかけで、生活への支障や要介護状態に進みやすくなっている状態のことです。
「老化だから当たり前」「病気とは違う」と思われがちですが、フレイルは単なる老化や病気とは別の、独立した状態として研究されています。そして大事なポイントは、フレイルは早めに気づいて対策をすれば、健康な状態に戻れる可能性があるということです。
5つのチェック項目でわかる「フレイル度」
今回ご紹介する研究では、次の5つの項目のうち、いくつ当てはまるかでフレイルの状態を判定しています。

- 体重減少:意図せず、この1年で体重が減った
- 疲労感:何をするのも億劫だと感じることが多い
- 筋力低下:握力が弱くなった(ペットボトルのフタが開けにくいなど)
- 歩行速度の低下:歩く速さが遅くなった
- 活動量の低下:日常的な活動量が減った
このうち、3つ以上当てはまると「フレイル」、1〜2つ当てはまると「プレフレイル(フレイル予備軍)」と判定されます。どれも当てはまらない場合は「健常」な状態です。
いかがでしょうか。「ペットボトルのフタが開けにくくなった」「青信号のうちに横断歩道を渡りきれないことがある」など、思い当たることがあった方もいるかもしれません。
フレイルの人はどれくらいいるの?
地域で生活している65歳以上の方を対象にした調査では、フレイルに該当する人は全体の6.9%でした。そして、フレイルの割合は年齢が上がるほど増え、また男性よりも女性の方が多いという結果が出ています。
さらに、調査時点でフレイルではなかった方を4年間追跡したところ、新たに7.2%の方がフレイルになっていました。つまり、フレイルは決して「特別な誰か」だけの話ではなく、年齢を重ねる中で誰にでも起こりうる、身近な変化だということが分かります。
フレイルになると、どんなことが起きやすいの?
この研究では、フレイルに該当した人をその後数年間追跡し、次のようなことが起きやすくなることが分かりました。
- 転倒しやすくなる
- 歩行や日常生活の動作(着替え・入浴・移動など)に支障が出やすくなる
- 入院することが増える
- その後の健康リスクが高まる
これらは、年齢や持病、生活環境などの違いを考慮しても、フレイルであること自体が独立した要因として影響していることが示されています。
また、フレイルは「持病が多いこと」や「介護が必要な状態」と同じ意味ではありません。持病があることはフレイルになりやすくなる一因ではありますが、フレイル=持病が多い人、というわけではなく、フレイルそのものが、その後の生活の支障につながる「引き金」になりうるという点が重要なポイントです。
「プレフレイル」は分岐点
先ほどの5項目のうち、1〜2個当てはまる「プレフレイル」の状態は、フレイルほど深刻ではないものの、健常な状態に比べてリスクがやや高まっている「中間の状態」です。

研究では、プレフレイルの状態の人は、その後3〜4年の間にフレイルへ進んでしまうリスクも、健常な人に比べて高くなることが示されています。
裏を返せば、プレフレイルの段階で気づき、生活習慣を見直すことができれば、フレイルへ進むのを防げたり、健常な状態に戻れたりする可能性があるということです。「ちょっと疲れやすくなったかな」「歩くのが少し遅くなったかな」と感じたタイミングこそ、見直しのチャンスといえます。
今日からできること
フレイル予防の基本は、特別なことではなく、日々の積み重ねです。
- 体を動かす習慣をつくる:ウォーキングやストレッチなど、無理のない範囲で体を動かす機会を増やしましょう。特に握力や下半身の筋力は、チェック項目にも直結する大切な要素です。
- しっかり食べる:意図しない体重減少はフレイルのサインのひとつです。バランスの良い食事、特にたんぱく質を意識して摂ることが大切です。
- 人とのつながりを保つ:外出や交流の機会が減ると、活動量の低下にもつながります。誰かと会う、話す、出かける、といった機会を大切にしましょう。
- 気になる変化は早めに相談する:「年だから仕方ない」と決めつけず、気になる変化があれば、かかりつけ医や専門家に相談してみましょう。
まとめ
フレイルは、年齢を重ねる中で誰にでも起こりうる、身近な体の変化です。
「体重が減った」「疲れやすい」「握力が落ちた」「歩くのが遅くなった」「活動量が減った」――この5つのうち、いくつ当てはまるか、ぜひ一度ご自身やご家族の様子を振り返ってみてください。
もし当てはまる項目があったとしても、悲観する必要はありません。プレフレイルやフレイルの初期段階であれば、生活習慣の見直しによって、再び元気な状態へ近づける可能性があります。今日の小さな一歩が、これからの健康を守る大きな力になります。
参考文献
Fried LP, Tangen CM, Walston J, et al. Frailty in older adults: evidence for a phenotype. J Gerontol A Biol Sci Med Sci. 2001;56(3):M146-M156. doi:10.1093/gerona/56.3.m146
本記事は上記研究の内容を一般の方向けに分かりやすく紹介したものであり、医学的な診断や治療を目的としたものではありません。健康状態に不安がある場合は、医療機関や専門家にご相談ください。

